彼と彼女と彼の事情
それでも――
やっぱり、夜、一人きりになると隼人のことが思い出されて……
一晩中、眠れない日もあった。
何度、隼人に電話しようと思ったことか……。
でも、いつも最後の一押しができなかった。
……隼人の反応が怖くて。
これ以上、心に傷を負いたくないという防衛反応が働いたから。
私は堪らず、隼人の2つ下の弟に電話をかけた。
静かな部屋に鳴り響く、呼び出し音。
その音は、今の私の心を映し出すかのように、淋しげで無機質な音だった。