彼と彼女と彼の事情
「ちょっと、ここじゃ落ち着かないから、外に行かないか?」



郁人に促され、この前のベンチに行くことにした。 


振り向きざまに病室に目をやると、ムラさんが親指を突き出して、ニカッと笑っていた。 



なんだか恥ずかしくて、俯いてしまった。



「…ん?どうした?」



「ううん、何でもない。
あっ、そうだ!これ、お土産なの。みんなで食べて!」


手にしていたケーキの箱を郁人に差し出した。



「サンキュー!」



部屋の中から「「ご馳走さま〜」」という声が、次々、飛び交った。



みんなの方に向き直し、ニコッと微笑んだ。




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