彼と彼女と彼の事情
「昨日、あれから病院に来たんだ」



「そうなんだ…」



隼人から聞いていたものの、私からは、そのことには触れなかった。



「兄貴に俺の気持ちは伝えたよ。奈緒のこと好きだ、って!」



「………。」 



足元に落ちていた石ころを爪先で転がしながら、郁人の話を聞いていた。



「兄貴と少しやりやって、ムラさんたちに止められたけどさ…」



思わず、顔を上げ、郁人を見つめた。 




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