彼と彼女と彼の事情


思い起こせば――…


気さくな郁人を、私はいつしか兄のように慕っていた。 


二人姉妹の私にとって、お兄ちゃんというのは、幼い頃から憧れる存在でもあったから。 


郁人の場合――


話は抜群に面白いし、ファッションや音楽にも詳しいから、私にとっては、すごく刺激的なお兄ちゃんだった。 


未体験ゾーンのクラブに連れていってくれたのも郁人だった。


クラブの中に知らない人がいないんじゃないかと思うくらい、いつも郁人の周りには人集りができていた。


「この子、俺の妹みたいな大事な子だからよろしく!」と、皆に紹介されて、めちゃくちゃ恥ずかしかった。


でも……郁人に大事にされてるようで、私は嬉しくてたまらなかった。



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