彼と彼女と彼の事情
「さて、と。荷物を整理するか」
そう言いながらも、郁人の荷物はあらかた片付けられていた。
あとは細々としたもの。
冷蔵庫の中や引き出しの中。コップや歯ブラシなど。
ちょうど荷物の整理を完了したところで、看護師の近藤さんがやってきた。
病室の中がパッと華やぐような可愛らしい笑顔を向ける。
「退院おめでとうございます」
「ありがとうございます。今までいろいろとお世話になりました」
郁人に合わせ、私も頭を下げた。
「毎日、彼女さんがお見舞いに来てくれてよかったですね!でも、あんまり無茶しないで下さいね」
「そうですよねぇ、羨ましいですよね!」
間髪入れずに、ムラさんが口を挟む。