彼と彼女と彼の事情
そんな彼の返事は、あまりにも残酷だった――。
「奈緒のことは今でも好きだよ。誰よりも愛してる。
でも……俺は奈緒と結婚することはできない。
だから、俺たちこのまま別れよう」
「――…ッ」
顔色ひとつ変えない隼人の言葉は、再び私をどん底に陥れた。
たちまち心臓に留めを刺されたような、鋭い痛みが広がった。
「そんなぁ……。
じゃあ、私たちの3年半って、いったい何だったの?
どうして、今まで付き合ってきたの?」
高まる感情が抑えられない。
心臓がバクバク音を立て、肩で息をするのもやっとだ。
悔しくて悔しくて、隼人に涙なんて見せたくなかったけど……
そんな感情とは裏腹に、拭っても拭っても、涙がとめどなく頬を伝っていった。