彼と彼女と彼の事情
すぐさま、車から下りて、相手の安否を気遣った。
ワンボックスカーに乗っていた人は、40代くらいの顎髭を生やした男性だった。
「大丈夫ですか?」
「はい、おかげさまで」
幸い、お互いに怪我はなく、ホッと胸を撫で下ろした。
警察を呼んだものの、互いに怪我がないということもあり、人身事故ではなく、物損事故扱いにしてもらえることになった。
あとは、保険会社に任せればいいこと。
でも――
ただひとつだけ、問題が生じた。