彼と彼女と彼の事情
あまりにもあっさりとした隼人の態度に、もはや昔の面影は微塵も感じられなかった――。
喧嘩をして、「別れたい」と言いだす私に「頼むから考え直してくれ」と、何度も懇願した隼人。
今では、それも夢だったかのようだ。
本当に二人は終わっているんだな、と思った。
電話口で話す隼人は、仕事もプライベートも充実しているような口振りだった。
「彼女はいない」と言ったものの、モテる隼人のことだからそれなりに女の子とも遊んでいるのだろう。
過去と決別し、前へ進んでいる隼人。
それに対し、いまだ立ち止まっている自分との間には明らかな温度差があった。