彼と彼女と彼の事情
あるとき、コンビニで500円の弁当を盗んだ50代の男性の裁判があった。
働けず、生きるために仕方なく手を出してしまった過ち。
男性は40歳の頃、製紙会社をリストラされ、妻と離婚し、その後は職を転々としていた。
日雇い労働など仕事があるうちはまだよかった。
でも、不況の波が彼のような弱者をさらに飲み込んでいった。
隼人は『刑罰よりも更正を……』と主張したが、裁判では実刑判決に――。
その日の隼人の姿が、今でも忘れられない。
『俺の力で、救いたかった……』と、唇を噛み締め、肩を震わせた。
そんな彼が、ひとりの人間として魅力的で……
彼にとっても、私にとっても、お互いが欠かせない存在だと思っていたのに――。