彼と彼女と彼の事情
「なぁ、近いうち会わないか?」
「えっ?」
「しばらく会ってないし、電話もいいけど、たまには酒でも飲みながらゆっくり話さないか?
もちろん、奈緒の奢りでさ!」
「えぇー!なんで、私の奢りなの?
郁人の方が稼ぎがいいんだから、郁人の奢りだったら別に行ってやってもいいけど」
「おまえなぁ、自分のこと何様だと思ってんだよ!」
「奈緒様だけど、文句ある?」
久しぶりに笑った。
本当に、久しぶりに。
友達と話していても、心から笑えていないような毎日だったから。
不思議と……
郁人と話していると、時間を忘れてしまうくらい楽しくて、私の気持ちを明るくしてくれた。