彼と彼女と彼の事情


なんて、私は都合がいいんだろう。


自分から車を降りたくせに。

途中、微かな望みを託した――。 


もしかしたら、隼人がUターンして私を連れ戻しに来てくれるんじゃないか……と思って。


隼人に対して、言葉にできないほどの怒りや不満があるはずなのに、


それ以上に、隼人を想う気持ちが勝り、馬鹿な私は淡い期待を抱いてしまった。


……隼人、早く来て。


……お願いだから。


……隼人、早く。


何度も何度も後ろを振り返り、同じような車が通るたびに立ち止まってみるけれど


私の目の前に、隼人が来ることはなかった――。







< 6 / 300 >

この作品をシェア

pagetop