彼と彼女と彼の事情
なんて、私は都合がいいんだろう。
自分から車を降りたくせに。
途中、微かな望みを託した――。
もしかしたら、隼人がUターンして私を連れ戻しに来てくれるんじゃないか……と思って。
隼人に対して、言葉にできないほどの怒りや不満があるはずなのに、
それ以上に、隼人を想う気持ちが勝り、馬鹿な私は淡い期待を抱いてしまった。
……隼人、早く来て。
……お願いだから。
……隼人、早く。
何度も何度も後ろを振り返り、同じような車が通るたびに立ち止まってみるけれど
私の目の前に、隼人が来ることはなかった――。