彼と彼女と彼の事情


二人で地上へ上がる階段を上り、表参道とR246の交差するところに出た。


隼人との別れの日、車を飛び出したあの場所――


紀ノ国屋(International super market)の看板が遠くに見えた。


やだ……また思い出しちゃう。


「さぁ〜て、どこ行く?
なんか食べたいものある?」

隼人のことを頭から消し去るように、くるりと郁人の方へ向き直った。


「そうだね。今日は郁人に任せるよ!
デートだと思って、お洒落なところに連れてってね!」
 
……なんて、おどけて言ってみたけど、郁人だからこんな冗談が言える。


隼人はもちろん、他の人だったら絶対に言えない。 

多分、郁人だったら居酒屋かお好み焼き・鉄板焼とか、気を遣わずに済むようなお店を選ぶんだろうな。   

郁人と楽しく食事ができるなら、別にどんなお店だって構わない。 


まぁ、隼人なら……


イタリアンとか、ちょっと洒落たお店を選ぶだろうけど。   


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