彼と彼女と彼の事情
目の前に聳えるこのお店は、雑誌やテレビなど、マスコミでよく取り上げられるお店だから。
ピエール……なんとか?という、超有名なイケメンシェフのいるお店だ。
あまりに似つかわしくないシチュエーションに、さすがに尻込みした。
しかも、今日に限ってカジュアルすぎる服装。
郁人も、然りだ。
後退りしそうになった。
「ほら、入るよ!」
ドアを開け、背中を押された私は中に入るよう郁人に促された。