彼と彼女と彼の事情
でも、郁人はそんなの気にするな!といった感じで、相変わらず堂々としている。
私は平然としてはいられなかった。
胸がドキドキして落ち着かない。
こういったお店には、隼人と何度か来ているはずなのに……。
男性に通された席は、壁側の奥まった席だった。
「料理がお決まりになりましたらお呼び下さい」
「……はい」
ワインクーラーとともに運ばれてきたフルボトルの赤ワイン。
独特の雰囲気の中、まずは再会に乾杯!
私の心配をよそに、郁人はいつも通り明るく機関銃トークを繰り広げる。
可笑しくて、つい笑ってしまう。
「もう少し声のトーンを下げようよ!」と、周りを気にしながらも楽しい時間を過ごした。