彼と彼女と彼の事情
隼人と郁人の実家――名古屋にあるその家を、これまでに何度か訪れたことがある。
『結婚するなら奈緒しか考えられない。だから、早いうちに両親に紹介したい』
という隼人との言葉に従い、付き合って間もない、まだ大学在学中に、隼人の運転するアルファロメオで帰省した。
その後も夏休みや冬休みを利用して、観光を兼ねながら彼の家を何度となく訪れた。
そのうち一度だけは、郁人も一緒に三人で帰ったことがあった。
いつもは世田谷の東京インターから東名高速を利用するのだけど、そのときは高井戸インターから中央高速に乗った。
諏訪湖サービスエリアでおやきを買い、せっかくだからと足を延ばし、岐阜に住む彼らの従姉妹の家を3人で訪ねた。
初めて会う従姉妹は皆、私に優しくしてくれた。