彼と彼女と彼の事情
〈7〉驚愕の事実
「雨かぁ……。予報じゃ、雨が降るなんて言ってなかったのにな」
隣で呟くように話す郁人の言葉を、ぼんやりと聞いていた。
二人共、傘を持ち合わせていなかったからこのまま駅まで歩くしかない。
「途中で傘が売っていたら買おうな」
と、郁人は言うけれど……
私にとったら、傘なんてどうでもよかった。
持って行き場のない、この喪失感。
――あの日の光景がフラッシュバックして、私を襲ってきた。