彼と彼女と彼の事情
「そんなことねぇよ」
「ううん。私、分かってたよ……ほんとは。
この前、電話で話したときから。隼人は私のこと、もう過去のこと、って感じだったもん。私なんて眼中にない感じだった」
「奈緒……」
「なんかさぁ、自分だけ取り残されたみたいで悔しかったの。
いつまでも別れを引き摺ってさ……未練がましくて馬鹿みたい」
自嘲を込めて話しながら、気付けば、涙が溢れていた。
止めようとすればするほど、とめどなく流れてきて、それに逆らうことはできなかった。