彼と彼女と彼の事情
そんな私の心情をすぐに察したのか……
「アハハハ……冗談だよ!そんなに驚くなよ。
奈緒のこと、からかっただけだよ」
……からかった、だけ?
……本当に?
「俺でよかったらいつでも話を聞くからさ。
奈緒は俺の妹みたいだもんな。妹が困ってたら、それを助けるのがお兄ちゃんの役目。
でも、我が儘な妹は嫌だけどな!」
そう話すと、笑いながら私の頭を大きな掌でクシャクシャと撫でた。
確かに、私から見たらお兄ちゃんのような存在ではあるけれど……
今の話、冗談なんだよね?……郁人。
「何、神妙な顔してんだよ!コラッ!」
いきなり後頭部をバコッと叩かれた。
漫才のような展開に、私も黙ってはいられない。
「痛ったぁ〜い!何すんのよ!」
「バーカ!何、マジになってんの?」
気が付けば、いつもの郁人に戻っていた――。