彼と彼女と彼の事情


そんな私の心情をすぐに察したのか…… 


「アハハハ……冗談だよ!そんなに驚くなよ。
奈緒のこと、からかっただけだよ」


……からかった、だけ?


……本当に?


「俺でよかったらいつでも話を聞くからさ。
奈緒は俺の妹みたいだもんな。妹が困ってたら、それを助けるのがお兄ちゃんの役目。
でも、我が儘な妹は嫌だけどな!」


そう話すと、笑いながら私の頭を大きな掌でクシャクシャと撫でた。


確かに、私から見たらお兄ちゃんのような存在ではあるけれど……


今の話、冗談なんだよね?……郁人。 


「何、神妙な顔してんだよ!コラッ!」


いきなり後頭部をバコッと叩かれた。


漫才のような展開に、私も黙ってはいられない。 


「痛ったぁ〜い!何すんのよ!」


「バーカ!何、マジになってんの?」


気が付けば、いつもの郁人に戻っていた――。



< 99 / 300 >

この作品をシェア

pagetop