ワイルドで行こう
11.俺、独りぼっちなんだ。
土曜日の夕。琴子は母と共に料理をしていた。
「もー、あの滝田さんが、まさかまさか経営者だったなんてねーっ」
「別に。経営者じゃなくても、滝田さんは滝田さんでしょ」
そんなうきうきしている母に対し、琴子は冷めた応答に徹した。
「あらあら。社長じゃなくても、彼はいい男だって言いたいんでしょ~」
いちいち母は意味深な笑みを娘に見せる。琴子は素知らぬ顔。
「でも、お母さんもそう思う。社長じゃなくても、彼はいい人というのは変わりないわね。また琴子にばれるまで黙っていたというのが奥ゆかしいわね」
先日、彼の正体が判明してから母にも報告。それから母は『やっぱりー! ただ者じゃなかった』と大はしゃぎ。
娘とその彼がそれとなく『良い関係』になりつつあることも察しているようで、真っ向からの確認はしてこないが、もうわかっているようだった。
「ねえ、お母さん。やっぱり『お重』なんて大げさよ。こんなの電車とバスを乗り継いで持っていくの重たいもの」
だが、そこは母が怖い顔を琴子に見せた。
「これぐらい。彼のために、頑張りなさい」
「お母さんが彼に食べて欲しいんでしょう、これ」
お重に詰められたおかずのほとんどは母が作ったものだった。
琴子が『土曜日に彼のお店を見に行ってくる。自宅も兼用なんですって』と告げると、また母が張り切って作り始めてしまったのだ。
その横で、琴子は一品だけ。小アジの南蛮漬けを作った。
夏本番、まだまだ空も明るい夕。母娘はお弁当を作り終え、琴子も出かける準備を整えた。
「行ってきます。きっと彼、お母さんのお弁当を喜んでくれるわよ」
「お店の従業員さん達にも、きちんと挨拶をするのよ」
英児から『俺の他に、整備士が三人と事務員が一人いる』と聞かされていたので、母に言いつけられ琴子も頷いて出かける。
だけれど、琴子はそれを避けていく心積もりだった。
「もー、あの滝田さんが、まさかまさか経営者だったなんてねーっ」
「別に。経営者じゃなくても、滝田さんは滝田さんでしょ」
そんなうきうきしている母に対し、琴子は冷めた応答に徹した。
「あらあら。社長じゃなくても、彼はいい男だって言いたいんでしょ~」
いちいち母は意味深な笑みを娘に見せる。琴子は素知らぬ顔。
「でも、お母さんもそう思う。社長じゃなくても、彼はいい人というのは変わりないわね。また琴子にばれるまで黙っていたというのが奥ゆかしいわね」
先日、彼の正体が判明してから母にも報告。それから母は『やっぱりー! ただ者じゃなかった』と大はしゃぎ。
娘とその彼がそれとなく『良い関係』になりつつあることも察しているようで、真っ向からの確認はしてこないが、もうわかっているようだった。
「ねえ、お母さん。やっぱり『お重』なんて大げさよ。こんなの電車とバスを乗り継いで持っていくの重たいもの」
だが、そこは母が怖い顔を琴子に見せた。
「これぐらい。彼のために、頑張りなさい」
「お母さんが彼に食べて欲しいんでしょう、これ」
お重に詰められたおかずのほとんどは母が作ったものだった。
琴子が『土曜日に彼のお店を見に行ってくる。自宅も兼用なんですって』と告げると、また母が張り切って作り始めてしまったのだ。
その横で、琴子は一品だけ。小アジの南蛮漬けを作った。
夏本番、まだまだ空も明るい夕。母娘はお弁当を作り終え、琴子も出かける準備を整えた。
「行ってきます。きっと彼、お母さんのお弁当を喜んでくれるわよ」
「お店の従業員さん達にも、きちんと挨拶をするのよ」
英児から『俺の他に、整備士が三人と事務員が一人いる』と聞かされていたので、母に言いつけられ琴子も頷いて出かける。
だけれど、琴子はそれを避けていく心積もりだった。