ワイルドで行こう
自宅を兼ね備えているといっても、彼にとっては職場。あまり姿をちらつかせたくない。琴子の場合は。『お店を閉める頃行くね』と彼にも伝えていて、英児も承知してくれた。
彼の仕事姿を見たいけど、それはまた次の機会に。まだつきあい始めたばかりだから。
母とこさえたお重を持ち、琴子は電鉄の駅へ向かう。
日が傾いたとはいえ、まだ空は青々としていて蒸し暑い。日傘片手にのんびり歩く。
峠が近い郊外にいる琴子の家と、海側にある空港近い郊外に店を持つ英児とは正反対に位置していると言っても良い。そこへ今から郊外電車とバスを使って向かう。
一度中心街の駅を降り、そこから空港行きのバスに乗る。店の立地はほぼ空港の傍。
道順も教えてもらったが、本当に郊外だった。少し行けば、この前入り江からきらきら光って見えた工業地域。だけれど、あそこなら街の雑踏や賑やかさからは遠ざかるが、のびのびとした環境で店を運営しているのだろうと想像できた。
『一目でわかると思うから』
あの龍星轟のマークが目印と英児が笑っていた。
郊外電車にバスを乗り継いでいる内に、空に茜が滲み始める。バスの窓には、離陸したばかりのジェット機が横切っていく。夕なずむ空へ機首を上げて。
空港をすこし通り過ぎた国道沿い。住宅地というよりかは、店舗や企業事務所が多い事業所地帯と言えばいいのだろうか。そんな道筋にあるとあるバス停で琴子は降りる。あとは道沿い、日傘を差してゆっくりと行く。
でも胸がドキドキしていた。彼の、お店。彼の会社。彼の自宅。彼の世界。
そしてついに、その目印をみつける。
まだ目の前じゃない、百メートル以上ありそうな位置でもすぐにわかる。コンクリートのフェンスにでかでかと、あの龍と星のロゴマークがペイントしてあったから。
「ほんと。一目でわかっちゃう」
揺らめく熱気がまだある夕の歩道を琴子は急いだ。
彼の仕事姿を見たいけど、それはまた次の機会に。まだつきあい始めたばかりだから。
母とこさえたお重を持ち、琴子は電鉄の駅へ向かう。
日が傾いたとはいえ、まだ空は青々としていて蒸し暑い。日傘片手にのんびり歩く。
峠が近い郊外にいる琴子の家と、海側にある空港近い郊外に店を持つ英児とは正反対に位置していると言っても良い。そこへ今から郊外電車とバスを使って向かう。
一度中心街の駅を降り、そこから空港行きのバスに乗る。店の立地はほぼ空港の傍。
道順も教えてもらったが、本当に郊外だった。少し行けば、この前入り江からきらきら光って見えた工業地域。だけれど、あそこなら街の雑踏や賑やかさからは遠ざかるが、のびのびとした環境で店を運営しているのだろうと想像できた。
『一目でわかると思うから』
あの龍星轟のマークが目印と英児が笑っていた。
郊外電車にバスを乗り継いでいる内に、空に茜が滲み始める。バスの窓には、離陸したばかりのジェット機が横切っていく。夕なずむ空へ機首を上げて。
空港をすこし通り過ぎた国道沿い。住宅地というよりかは、店舗や企業事務所が多い事業所地帯と言えばいいのだろうか。そんな道筋にあるとあるバス停で琴子は降りる。あとは道沿い、日傘を差してゆっくりと行く。
でも胸がドキドキしていた。彼の、お店。彼の会社。彼の自宅。彼の世界。
そしてついに、その目印をみつける。
まだ目の前じゃない、百メートル以上ありそうな位置でもすぐにわかる。コンクリートのフェンスにでかでかと、あの龍と星のロゴマークがペイントしてあったから。
「ほんと。一目でわかっちゃう」
揺らめく熱気がまだある夕の歩道を琴子は急いだ。