ワイルドで行こう
「泣かねえよ」
口ではそう言う英児だが、そのまま琴子の胸元にくったりと頭を預けてくれる感触。
それでも彼が琴子の胸で安らいだのは一時だけ――。すぐに琴子の胸を突き放すようにして、離れていってしまった。
だけれど律した英児は、またいつもの男らしい黒目を輝かせ、今度は琴子が彼の胸にぐっと抱きしめられてしまう。
「琴子がいてくれたら、もう泣かねえよ」
やっぱり泣いていたんじゃない。涙はなくても。心のどこかでこの人も泣いていた?
聞きたくても、それを悟られたか『何も聞くなよ』とばかりに唇を塞がれてしまう。琴子になにも言わせないためなのか、息継ぎもさせてもらえない長いキス――。
「こういうところ。ほんと琴子はきっちりしているよな」
やっと息をさせてもらえたかと思ったら、英児の手がまた琴子のブラウスのリボンへ――。
「俺がさっきほどいたのに。ちゃーんと結び直している。決して乱れた胸元のままにしておかない」
俺、そんなお前が好きだよ。
いつもの余裕の笑みに戻っている英児が、リボンの端をつまむ。
「琴子が綺麗に直した結び目を、俺が何度も台無しにして淫らにする」
そう言って、また手が早い英児がさらっと水玉ブラウスのふんわりリボンをほどいてしまう。
「お母さんにちゃんと返すけどさ。今は、俺の琴子だから」
え、なんか。やっぱり私、弄ばれていない?
そう思うほど、いつもの手が早い彼に元通り。
貴方、本当にどんな生き方してきたの?
始まったばかりの恋。まだ全てを知らない恋人。でも……彼が好き。彼が泣きそうになったら、本当に胸が締め付けられたから。
だから、彼の言いなり。ずるい。女は好きになった男の為になにかしてあげたいのに。そんな寂しいなら、私が傍にいてあげる。私が貴方をあっためてあげるって。
だから。あの大きなベッドに連れて行かれ強く押し倒されても。琴子は彼に抱きついて、彼の好きにさせる。