ワイルドで行こう
彼はわかっている。『この女、この前のセックスである程度肝が据わった。それならもっとすごいことしようじゃないか』。冷めた女の目に負けん気の男的挑発。男の思うつぼ、女はそこには恥じらいを見せる。
淫らな格好より、淫らな行為の方がいまは恥ずかしい。『この前みたいに』。初めて彼と愛し合ったというのに、あの夜、野生じみた交わりに没頭してしまった琴子がしたこと――。琴子が泣いて悦ぶそこを彼が懸命に探すから、琴子自ら『ここよ』と白い指先で教えた。
その互いに探し合う行為は、琴子が恥じらいを捨てたから他ならない。だがそれも慣れた英児の上手いリードがあったから、『ここ?』『どこ?』『琴子のとろけそうな顔をみたいんだよ』『可愛い声で泣くんだな』『ほら、教えて』。英児の巧みなリードはやがて『欲しい、ここをいじって』と女の口先と指先に自白させる。『ここと、ここと、ここ、だな。わかった』。そうとは願っていないのに、彼が一度にいっぺんに懸命に愛してくれる。巧みに使い分ける何本もの男の指、それを教える女の指が絡みに絡み合って、泣きたくなるところを一緒に責めた。唇でも舌でも、交わる行為でも。それを共に重ねていくうちに、琴子は月の光の中に自分が消えていくのではないかというほどに、空に向かって儚く崩れていった。
あれを今、同じように。琴子の白い指先が自ら、艶めく黒毛をかき分け剥き出しにして英児に差し出した。
恥じらいで目を閉じても、うっすらとそんな自分を確かめ、そして彼の満足そうな笑みを淫らな光景の向こうに見つける。
「いい匂いがしてきた」
くんと英児の鼻先が得意げに動く。ついに英児の唇がそこに。ただ吸い付くのではなく、くっと唇の吸う角度を傾けて静かにそこを吸った。それが『知っている』という仕草……。
「っんく」
ぴくんと震える琴子。
琴子が泣いた場所を彼はちゃんと覚えていてくれた。
でも、秘密を暴かれて責め立てられているような……。甘い毒を隠していただろう。ここにほら、こんなに。見つけたからには、吸い尽くしておかないと。また溜まって疼いておかしくなるだろ。そうなる前に、俺が……。そんな英児の声が聞こえてくるような気がした。実際には彼はただ甘い毒をゆっくり吸いながら、琴子の秘密を優しく責めているだけなのに。
淫らな格好より、淫らな行為の方がいまは恥ずかしい。『この前みたいに』。初めて彼と愛し合ったというのに、あの夜、野生じみた交わりに没頭してしまった琴子がしたこと――。琴子が泣いて悦ぶそこを彼が懸命に探すから、琴子自ら『ここよ』と白い指先で教えた。
その互いに探し合う行為は、琴子が恥じらいを捨てたから他ならない。だがそれも慣れた英児の上手いリードがあったから、『ここ?』『どこ?』『琴子のとろけそうな顔をみたいんだよ』『可愛い声で泣くんだな』『ほら、教えて』。英児の巧みなリードはやがて『欲しい、ここをいじって』と女の口先と指先に自白させる。『ここと、ここと、ここ、だな。わかった』。そうとは願っていないのに、彼が一度にいっぺんに懸命に愛してくれる。巧みに使い分ける何本もの男の指、それを教える女の指が絡みに絡み合って、泣きたくなるところを一緒に責めた。唇でも舌でも、交わる行為でも。それを共に重ねていくうちに、琴子は月の光の中に自分が消えていくのではないかというほどに、空に向かって儚く崩れていった。
あれを今、同じように。琴子の白い指先が自ら、艶めく黒毛をかき分け剥き出しにして英児に差し出した。
恥じらいで目を閉じても、うっすらとそんな自分を確かめ、そして彼の満足そうな笑みを淫らな光景の向こうに見つける。
「いい匂いがしてきた」
くんと英児の鼻先が得意げに動く。ついに英児の唇がそこに。ただ吸い付くのではなく、くっと唇の吸う角度を傾けて静かにそこを吸った。それが『知っている』という仕草……。
「っんく」
ぴくんと震える琴子。
琴子が泣いた場所を彼はちゃんと覚えていてくれた。
でも、秘密を暴かれて責め立てられているような……。甘い毒を隠していただろう。ここにほら、こんなに。見つけたからには、吸い尽くしておかないと。また溜まって疼いておかしくなるだろ。そうなる前に、俺が……。そんな英児の声が聞こえてくるような気がした。実際には彼はただ甘い毒をゆっくり吸いながら、琴子の秘密を優しく責めているだけなのに。