ワイルドで行こう
「今日は、ラフなんだな」
言葉を交わしても、二人は互いの唇をついばみ、愛撫しながら……。
「うん。お掃除したかったから」
――と言う実は『建前』。実際は他に目的が。
「つまんないな。いつもの女らしい琴子を楽しみにしているのに。家事用の着替え、この部屋に置いて行けよ」
「そうね、そうする」
英児の手がじっくり背中を撫でている。でも、その内に乳房を揉むんで楽しんでいるだけかと思ったら、いつの間にかポロシャツを背中も胸元も半分以上めくりあげていたので琴子はびっくり。
「もうー、やめて」
そこでやっと琴子から離れ、脱がされるのではないかと思うほどめくられていたシャツの裾を引っ張り下げた。英児ならやりかねない。そこまでしたら琴子の両腕をあげさせて、さらっと脱がして抱きついて、あちこち吸い付いてとか――。絶対にやりかねない。今日まで既に何度かやられていた。
そんな怒る琴子を見て、英児はニンマリ見下ろして笑っているだけ。もうホントに『この悪ガキ』と言いたくなるこの頃。
「俺の昼休み、一時半からな」
悪戯して悪かったとばかりに、耳元にちゅっと口づけを残す英児。それだけすると、今度は彼の方が潔く背を向け、さっさと部屋を出て行ってしまった。
愛してくれる時は集中的に濃厚にべったりというくらいの彼だけれど、いざ方向を変えると、その気持ちの切り替えも素早い。
リビングの窓から店先を見下ろすと、揺らめく熱気の中、車の洗車を始めた英児の姿が。その横顔は『滝田店長、滝田社長』。この店を守る男。
土日で、龍星轟にやってくる車もよく入ってくる。来店してきた顧客にも、気の良い笑顔で出迎える彼も格好良くて、琴子は暫く眺めて微笑んでいた。