ワイルドで行こう
店を閉めた後、今夜の夕食は英児と車でドライブがてら出かけて外で楽しんだ。
そしてまた、この二階自宅でふたり――。
夜風にざざざっと団栗の葉のさざめく音が、昼間よりずっと近くに聞こえる。
静かな郊外の空港町。ジェット機の飛行音もない、営業中の喧騒もない。風と葉と、そして時折夜鳥の鳴き声も遠く聞こえる。
涼しい風が入るバスルーム傍の洗面所。風呂上がりの琴子はバスローブ姿で、あの寝室で彼とくつろぐ準備。
『琴子、まだなのか』
廊下の向こうから、そんな彼の声。
綺麗に汗を流したはずだけど、ぬるい湯船でゆったり暖めた身体は火照っている。少しだけ湿り気が残っている黒髪、しっとり柔らかくなった素肌。今夜も琴子は火照った肌にほんの少しの香りをまとって彼のもとへ。
寝室に入ると、もう素肌になっている英児が新しいシーツの中、煙草片手にカーレースの録画を見ていた。暗がりの部屋にチカチカと光るテレビ画面。だが琴子が来ると、英児がすぐにぱちりと消してしまう。
途端に暗くなる部屋。
それを合図のようにして、琴子は暗がりのベッドサイドでバスローブを脱ぎ、ぱさりと床に落とす。窓からの青い夜明かりに、綺麗になったばかりの身体が白く浮かび上がる。
「ほんっとに長いな。女の子の風呂は」
「でも、そろそろ慣れたでしょう」
「まあな。それが俺も楽しみなんだから」
暗がりの中、あの大きな枕に背を預けている英児が煙草を吸いながら笑う。