ワイルドで行こう
琴子、琴子。そういって彼が、起きてからずっと露わにしたままだった乳房をいつものように両手で寄せ、その頂をちゅっと吸って遊び始める。
「ん、ん。もうっ……もう……負けないから」
胸元で愛撫する彼にまた溶かされる前に、このオレンジをなんとかしてやろうと思った琴子は胸先からやってくる甘い痺れを堪えながら、眼鏡の目の前でオレンジの皮を剥く。
はあはあと息が荒くなりながら、甘い快感で震えている指先で堪えながら、瑞々しい太陽色の果汁が滴る果肉を取り出しやっと口を開けて頬張った。
「俺が一生懸命やっているのに、なに他のことしているんだよ」
そっちがいきなり抱きついてきて、よく言うわよ――と言い返したいが、いま、琴子の口は芳しいオレンジに独占されていてもぐもぐするだけ。口元を手で押さえて、とりあえずごっくんと飲み込んだ。
「どうしていつもいきなりなの、よ」
だが英児もにっこり言い返してくる。
「どうしていつも、俺をその気にさせるんだよ」
オレンジの香りがまだ漂っている唇を、いつも通りぐっと力強く塞がれる。
英児の有無を言わせない激しい侵入。熱い舌があっというまに琴子の奥の奥まで愛してくれる……。ん、ん、と呻きながらも、やがて琴子も目をつむってうっとり、彼と一緒に舌先を絡めて愛し合ってしまう。
「いい匂いだ。オレンジの味も、する」
うっすら瞼を開けると、愛する彼のうっとりした顔。琴子の唇をいつまでも愛して、そしてその大きな手が乱れている黒髪をまた愛おしそうに額でかき分け、眼鏡の瞳を見つめてくれている。
「眼鏡の琴子、すげえいい」
「そう……?」
「うん。すげえ、いい……」
初めて眼鏡をかけた顔を見せた時もそうだった。残業が続く時はコンタクトではなく眼鏡にしているので、夜になって迎えに来てくれた英児がそんな眼鏡琴子に遭遇して、興奮してしまい困ったほど。『琴子、眼鏡かけるんだ。嘘だろ。俺、眼鏡の子大好き』と。なんでも高校生時代に好きだった子が眼鏡の女の子だったとか。元々、タイプらしい。それが今朝は丸裸で現れたので、もうどうしようもなく狼になってしまったよう。
朝なのに突如として出現した狼さん。ついに彼の手がすっと足へと降りていく……。そこにはもう、熱く硬くしている彼の塊も目覚めていたのを、琴子の肌も気がついていた。