ワイルドで行こう
彼の情熱の鉾先が、まだ昨夜の潤いを残している琴子の窪みに押し当てられる。彼がひとたび腰をくっとついただけで、琴子の中にするんと入ってきてしまう。結局のところ、英児をすっかり迎えられる身体になってしまっていたということ……。だからそこで、琴子も観念してしまう。
朝の気怠い目覚めに、とりとめない交わり。夜の灼けるような激しさではなく、どこまでもゆるゆるとスローで、ある意味惰性的なゆるやかさ。
「あん、……いいの? 事務所、開ける時間……じゃないの?」
「大丈夫」
ゆっくり腰を動かす英児の首に抱きついて、小さく柔らかに喘いで。
「でも、もう……こんな時間。みんなが、来ちゃう、でしょ」
「……今日はさ……、俺、半休もらって遅出……午後から」
「え、そうなの?」
「そう。だから琴子とゆっくり、こうして、」
ゆっくりだけれど英児の腰が大きく弧を描いて入り込んでくるので、琴子も日射しの中、ゆっくり背を反り熱い息でそっとうめく。
真っ白なシーツに日射しが照り返し、同じように、琴子の肌も今まで以上に真っ白に晒されていた。それを英児が狂おしい眼差しで見下ろし、そしてべたついている夏の肌をそれでも愛おしく撫でてくれる。
「琴子の、肌、こんなに、白かった、んだな」
英児の吐息も熱い……。
初めての朝。琴子も恥じらいもなく、燦々とした日射しのシーツの上で、身体を開く。英児にだけ、よ。英児だから。そっと心でそう呟いて、大きく開いた足に、腕に、胸元に、口元に、彼の全てを奥深く受け入れる。そのたびに、琴子は心の中で『愛してる、愛しているの、愛しているから』と囁いている。でもそれは、彼に愛される猫には鳴き声にしかなっていない。
熱くて、蒸し暑くて。火照りすぎて目眩がしそうで。じっとりと目に見えない汗が肌に滲みはじめる。愛してくれる男の肉体が触れたらべったりと貼り付いて離さない肌になっている。
朝のセックスは、あくまでゆっくり。英児も緩やかに琴子の中を出入りして、そしてじっくりと乳房を愛撫して、つんとしたままの胸先を優しく何度も吸ってくれる。
「日曜の恋人ってやつ、やろうぜ。外で昼飯食って、ドライブに行こう」
明るい夏の日射しの中、いつまでも続く緩い愛撫に琴子もこっくりと頷く。