ワイルドで行こう
「当店に来店されているお客様に同伴されていたお嬢様が、こちらでお母様と見られていたフリルのスカートと、当店のブラウスを合わせたいと仰っているので、お借りしたいのですが」
「どちらのお客様ですか」
黒いワンピースの女性がその名を呟くと、ヤングブランドのスタッフである彼女もすぐに判った顔でスカートを取りに行く。
「ちえり、じゃないか」
英児が呟いた言葉に、琴子ははっとする。彼が女性の名を言ったから。
そして呼ばれた女性も、やっとそこにいる男性を見下ろした。そして、彼女もゆっくりと驚きの顔に変わっていく。
「英児……」
「いつ、帰ってきたんだ。神戸はどうした」
英児の問いに、彼女が目を逸らした。
そして英児も、そっと彼女から目線を外した。目が合うこと見つめることは耐え難そうにしている二人を見て、琴子もすぐに判った。
――この女性が、英児の元婚約者なのね。