ワイルドで行こう
ちょっと彼らしくないような気がした。いつもなら、風呂上がりの琴子を見たら悪ガキになって、茶化したり悪戯をして楽しみそうなのに。
でも、この時。英児の中で、彼が一人で真剣に何を思っていたのか。琴子はこのあとすぐ、知ることになる。
だから、それは琴子にとっては唐突だった。
先に入浴を済ませた琴子は、すっかり二人きりで過ごす部屋になった寝室で既に横になっていた。もう眠気が……。英二を待っている間に寝ないようにと、側にあるライトをつけていたものの、その柔らかで優しい灯りが余計に眠気を誘う。
ついにうとうとしていたのだろう。英児がいつこの寝室に戻ってきたのか判らなかった。
「琴子、琴子……」
耳元が熱くなる感覚と、身体に重みを感じて、琴子はうっすらと目覚める。
仄明るいライトが消され、部屋は青い薄闇の中。
そこにはもう、熱い肌で覆い被さる英児がいた。ぼんやりと目覚めたばかりの琴子の身体を既に上に向け、ショーツもキャミソールも脱がされている。胸元には柔らかい彼の黒髪がさわさわと触れてる。乳房にはきゅんと広がる甘い痛み。もう彼に愛されていた。
だが、何をされているのか気がついても、琴子はそのまま力がこもらない両腕を彼の背に回して抱きついた。
「ごめんなさい。いつの間にか眠っていたの……」
寝起きの掠れた声で囁くと、また熱い息を吐く英児の唇が琴子の耳をくすぐった。
「そのままにしてあげたかったけどな。でも俺……」
判っている。いつものようにそっと眠らせてはおけなかった、そんな彼が待ちきれずにいてくれた熱い気持ち。それが今、琴子の身体と肌にぶつけられている。乳房の先を強く愛される痺れに、吸い付くような彼の大きな手が肌を撫で回している。その狂おしくなる目覚めに、琴子は彼の胸の下で気怠くもがいた。
いつもの少し強引なキス。まだ気怠い琴子には、刺激の強い目覚ましだった。
「英児……」
彼の背に抱きついて、琴子も英児の肌に頬を寄せる。熱い肌と、そして……シャワーで汗を流してきたはずの男の身体から、あの匂い。その匂いを知って、琴子も徐々に覚醒する。