ワイルドで行こう
その男の情熱を片手に、男の愛撫にとろけて恍惚としている女に迫りながら、英児は喘ぐ琴子の耳元で聞いた。
「今日は危ない?」
熱い吐息を弾ませながら、英児が耳元でそっと聞いたこと。でも琴子は驚かない。たまに英児が尋ねることだったから、正直に告げる。
「うん……。どちらかというと危ない時期」
いつも通りに答えた。そうすれば気持ちがどんなに盛り上がっていても、英児は諦めてきちんとしてくれる。今までそうだった。
「琴子――」
『あっ』。琴子の中に、吸い付くような熱い感覚――。肌の暖かみ。
不意をつかれ、琴子はしばし茫然としてしまった。
この日は危ないのかどうか。英児は尋ねて答えをきちんと聞いた上で、琴子の中に素肌で入り込んできた。
琴子をすべてを奪う気迫を見せてはいるけれど、英児は乱暴にはしなかった。ただ、そのまま入ってきただけで止まっている。そして琴子の乱れている黒髪を頬からのけて、しっかりと瞳を見つめてくれている。
「嫌だった……?」
どう答えて良いかわからなかった。でも……嫌じゃない。だって初めてじゃない。初めて抱き合ったあの月夜だって、こうして皮膚と皮膚が溶けあって一つになるような感覚に二人で燃えて熱く愛し合ったのだから。
許されるなら、いつだってこうしてなんの邪魔もなくベールもなく、彼の熱い皮膚とくっついて愛し合いたい。本当の体温で愛し合いたい。でも、それは……。
戸惑っている琴子に、英児が今夜はとても優しい口づけをしてくれた。
「お前とずっとこうしてひとつになって、それで家族になりたい」
琴子はもっと驚いて、目を見開き英児をまじまじと見返した。
「どうしちゃったの」
でも。唇を塞がれる。そして英児がついに奥へ奥へと入り込んでしまう。
そのまま最後まで愛され抜かれたら……。その先に、確かに『家族』が見えてくる。
怯むことなく、でもじっくりと琴子を愛し続ける英児が囁き続ける。
「俺は今すぐでも構わない」
それは紛れもないプロポーズなのではないか。不確かだけれど、琴子にはそう感じた。