ワイルドで行こう
5.お兄さん!? 俺が?
彼が運転席、琴子が助手席に落ち着いても、後部座席にいる母は無言だった。
真っ黒い車が、けたたましいエンジン音を響かせ発進した。
「私、こういうスポーツカー、初めて」
「ヤンキーみたいだって言ってくれてもいいんだけど」
まさに第一印象はそれだった。でも車内はとても綺麗で汚れていない。どこもピカピカ、そして車のシートに響いてくる重低音のような響きが新感覚。でもなんだか心地よかった。
車の走りもすごい安定感。それに隣の彼のハンドルさばき、上手い。ブレーキも丁寧に踏むから、信号停止もすうっと止まって気持ちがよいし、発進も優しかった。
「お母さん、急に俺みたいな男が割って入って驚いたでしょ。俺ね、お嬢さんの新品のコートを汚したことがあるんですよ」
すると後部座席で固くなっていた母が急にハッとした顔。
「あの時の、確か、桜が咲く頃、琴子がコートを汚して帰ってきたことがあったわね」
彼との関係を誤解なく理解してもらうため、琴子はすぐさま口を挟む。
「でもあの後ね。こちらの方、ちゃんとコートを弁償してくれたのよ。あのね、あの後、私が着ていてたコートがそれなの……」
バツが悪くて琴子が口ごもると、またまた母が驚いた顔に。
「ええ、あれ、自分で買い直したって言っていたじゃない」
「ええっと。本当はこちらの方が、もっと良いコートを届けてくれたの。その、高いコートを男の人にもらったって言えなくて」
『まあ』と、母が目を丸くして、運転席にいる彼をやっと直視。マジマジと見つめ、唖然としていた。
真っ黒い車が、けたたましいエンジン音を響かせ発進した。
「私、こういうスポーツカー、初めて」
「ヤンキーみたいだって言ってくれてもいいんだけど」
まさに第一印象はそれだった。でも車内はとても綺麗で汚れていない。どこもピカピカ、そして車のシートに響いてくる重低音のような響きが新感覚。でもなんだか心地よかった。
車の走りもすごい安定感。それに隣の彼のハンドルさばき、上手い。ブレーキも丁寧に踏むから、信号停止もすうっと止まって気持ちがよいし、発進も優しかった。
「お母さん、急に俺みたいな男が割って入って驚いたでしょ。俺ね、お嬢さんの新品のコートを汚したことがあるんですよ」
すると後部座席で固くなっていた母が急にハッとした顔。
「あの時の、確か、桜が咲く頃、琴子がコートを汚して帰ってきたことがあったわね」
彼との関係を誤解なく理解してもらうため、琴子はすぐさま口を挟む。
「でもあの後ね。こちらの方、ちゃんとコートを弁償してくれたのよ。あのね、あの後、私が着ていてたコートがそれなの……」
バツが悪くて琴子が口ごもると、またまた母が驚いた顔に。
「ええ、あれ、自分で買い直したって言っていたじゃない」
「ええっと。本当はこちらの方が、もっと良いコートを届けてくれたの。その、高いコートを男の人にもらったって言えなくて」
『まあ』と、母が目を丸くして、運転席にいる彼をやっと直視。マジマジと見つめ、唖然としていた。