ワイルドで行こう
初めての一夜を過ぎると、彼女とのセックスは男と女を存分に絡め合う情熱的なものになり、英児を狂わせた。それに。彼女は愛せば愛すほど大胆になり艶やかさを増していく……。それも秘め事の時は特に。
ほら、今夜も――。英児に後ろから貫かれあられもない猫になって喘いでいても、顔を埋めているシーツから時折こちらを見つめてくる黒目は、あの夜のように煌めいている。それを見ただけでもう……。彼女の舌先でじっくり愛撫されるより、英児の心臓をぎゅっと鷲づかみにされる。
「琴子……琴子」
「あっん」
英児も彼女を懸命に呼んでしまう。英児の塊に身体を繋がれ、猫の格好で従っている琴子も激しく漏れてしまう喘ぎ声を必死に押し殺している。
「はあ、琴子。もう、俺も……」
すべすべしている彼女の尻に爪を立てるほど握りしめ、そして英児は力強く彼女の中へ押し込む。
「このまま、いいよな。いいな、琴子」
このまま。なにも付けずに。お前の中で果ててもいいか。
聞かずとも、結婚を決めたその日から彼女とはずっとこうして愛しあっている。それでも英児は彼女にいつも尋ねる。そして彼女の返答も決まっている。
「うん、いい。そのままして」
シーツに顔を埋めていた彼女の黒い目だけが、ちらりと見える。その目が、黒く濡れ揺らめいている。いつも英児が待っている彼女の可愛い涙。英児の男が燃え上がる。
既になににも囚われない『ぶっとばす男』に野生化した英児は、結婚を約束した女を思うままに愛している。
「いくぞ、琴子」
シーツを握りしめている彼女が、無言でこくんと頷いた。
彼女の中にただそのまま、英児は熱愛を注ぎ込む。彼女のあの匂いが芳醇に広がっている中、英児がたった今彼女に中に残したつんとした男の匂いも微かにに混じった。
それに彼女も気がついたのか。
「いつも、そう。とても原始的……よね」
意味わかんねーよ。と言いたくなりそうな呟きなのだが。でも今なら、なんとなく解る気がした。
いつも男と女、いや牡と牝として愛しあう。それは動物的で、原始的。でもここにいる二人は自然に従うように原始的に睦み合う。彼女の身体から広がる女の匂いも、生殖行為で放たれた男の匂いがベッドの上で混じり合うのも。それは原始的な現象なのだと。
結局、私も原始的と彼女が呟いて、シーツの上に崩れ落ちた。横たわった彼女もまた獣的に艶っぽく乱れ果てている。