ワイルドで行こう
7.ブルー、ブルー、ブルー
鈴子と買い物を終え、今度は英児もそれなりに夕飯の支度を手伝う。すると、庭先には、またドルルンと重たいエンジン音。そんな時、鈴子が少し顔をしかめる。
「もう~。また我が家に、厳ついスポーツカーが二台、庭を占領ね。ご近所さんもびっくりしているわよ。あの琴子ちゃんがすごい男っぽい車に乗って……とか」
「すみません。元ヤンの走り屋野郎が影響しちゃって」
英児は冗談で茶化したつもりだったのに、鈴子がハッと申し訳ない顔をする。
「別に、お母さんは英児君のそんなこと気にしていないよ。ご近所さんだって、英児君がよく様子を見に来てくれる良いお婿さんだって言ってくれるし。男前で頼りがいがあって羨ましいって言われているんだから」
「マジですか、それ。えー、俺、そんな褒められたことないんですけど!」
「やだね、この子は。本当に男前で頼りがいあるんだから、自信を持ちなさい!」
鈴子お母さんに、バシリと背中を叩かれる。だが英児は『いて』と思いながらも、嬉しかった。
ここに、娘同様に俺のことを受け入れてくれるお母さんがいるんだなと――。今でもこの大内家にくると元気になれる。
ここはそんな暖かいところ。英児のもう一つの家庭だった。
「ただいま~」
ゼットを駐車させた琴子がリビングに現れる。
「わー。もしかして、今夜はスキヤキ? やったー」
「英児君にいっぱい食べてもらうと思ってね」
「英児さんのおかげね。あ、緋の蕪漬けがある!!」
「それ、英児君のお土産。美味しかったよ。ね、英児君」
対面式のキッチンで鈴子が仕上げた料理を盆に載せて運ぼうとしている英児も笑って頷く。
「いただきまーす」
帰ってきて一番、琴子が側に準備済みの自分の箸をもって、緋色の蕪を一枚、ぽいっと口に放り込んだ。
「こら、琴子。行儀悪いわね。荷物を置いて、手を洗って、座って食べなさい」
「はーい」
あの琴子がちょっと行儀悪になるのも実家だからだろう。そして今でも小さな娘のように母親に叱られるのも。
この家に来ると、そんな彼女も見られる。