ワイルドで行こう

 そんな彼女の隙をついて、英児はいつだって易々と彼女の身体を捕まえてしまう。
 今日のおでかけにと、彼女が選んだアーガイル模様のニットワンピース。その裾をまくり上げ、英児はいつもどおり彼女の肌を探す。
 柔らかいニットだけかと思ったら、その下に濃い茶色のスリップドレス。そんなものが一枚だけでも彼女の肌を英児から遠ざけているかと思うと、もどかしさいっぱいでニットと一緒に乱暴に引っ張り上げてしまう。
「え、英児さん……」
 ムキになって英児が肌をさがしていることを受け入れてくれたのか、琴子も英児の背中へときつく抱きついてくれる。冷えた身体に、柔らかくて温かな身体。琴子そのもの。それでも英児は『もっと熱いもん、こいつは持っているんだよ』とそれを探す。本当に触れたくて探していたものにやっと辿り着く。見るからに温かそうでふわふわふっくら、それでもまだ優しい花の刺繍と女らしいレエスでおおわれて隠れている。英児は果敢に障害物に挑むかのように即座に琴子の背に手を回し、指先だけでいとも簡単にホックを外す。そこからやっと……、柔らかにふるえる白い乳房が英児を迎えてくれる。
 冷えた両手で触れると、琴子がふるっと僅かな反応。彼女の乳房は男の大きな手にすこし余る。彼女を脱がしたことがある男なら、最初にその着痩せしている落差に悦んだに違いない。そんな男心をくすぐってくれる女らしい乳房で、英児はいつだって触らずにいられない。程よく手に吸いついてくれる柔らかさに熱い体温が、劣情を駆り立てるだけではなく、寂しさも癒してくれる。そんな優しさを持っていた。
 いつもそんな男のエロ感覚と癒しが紙一重。今もそう。彼女の温かな乳房に触れて安心している自分もいるし、触れているだけでどうにでも虐めてやりたい気持ちが激しく交差する。
 その手がいつしか、彼女の乳房をゆっくりとつまむように握っている。そのせいで赤い蕾のような胸先がいやらしくツンと起ち英児を見つめるているよう……。それを見て、なにもせずにいられるはずはない。赤い小さな胸先に、英児はそっと唇をよせ静かに吸った。
 『あ』と琴子が小さくうめき、悩ましげに眉根を寄せる艶ある顔に。
「英児さんの、手も、指も……口の中まで……冷たい」
 冷えた舌先に熱くて固い彼女の胸先。それを口で愛撫しているから琴子もその温度差に気がついてくれ、さらにぎゅっと英児を熱い肌に抱き寄せてくれた。

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