ワイルドで行こう
彼女に抱きしめられると、いつも強く思う。
「これさえあれば。俺は……なにもいらない……」
彼女の乳房を揉んで舌先で愛撫しながら、英児は囁く。もう濡れた吐息をしっとりとこぼす琴子が『え』と問い返してくる。
「あったかい琴子が傍にいるだけで充分だっていってんだよ。ずっと、こうして、お前の熱い身体が、俺の隣にいれば……それでいい」
とろけそうな彼女の乳房と乳房の合間に包まれ、英児は恍惚とその肌を堪能する。そんな甘えるように離れない男を、やっぱり彼女が優しく抱きしめてくれる。
「でも。私も英児さんがいないと……あったかくないから」
私の身体がいま熱いのは、英児さんが冷え切っていた私の肌を愛してくれたおかげなのよ――と、彼女が囁いた。そんな女っぽい顔で言われると、英児の胸も熱くなる。
今度は、そんな琴子の唇を求める。彼女に抱きしめられて、冷えた手を乳房が柔らかく温めてくれて。最後、英児は彼女の唇に舌先と頬を温めてもらう。
いつも強く吸い付いてしまうから、静かな寝室だと、英児が押しつけるように繰り返す口づけの小さな音が聞こえてしまう。
琴子の体温で英児はやっと温まったところなのに。でももう琴子の額にはじんわりとした汗。英児はうっとりとした目で見つめてくれる彼女の顔をしっかりみようと、その湿った黒髪をかき上げ彼女の頬を包み込んだ。
「琴子。だから、さ。お前さえいてくれたらそれでいいんだから。子供はまだ急ぐことないだろ」
鼻先と鼻先をくっつけて話し合う。でも、琴子はすぐには諦められない戸惑いをその瞳に見せていた。英児も怯まずにつづける。
「そこ、俺の枕の下にあるもん、取ってくれよ」
それだけで琴子の表情が一瞬で強ばった。だが英児は強く繰り返す。
「いいから。取ってくれ」
わざと彼女の手にさせようとした。ある意味『酷』だと分かっていても。
それでも、琴子も英児が言わんとすることを理解してくれたからなのか。白い腕を伸ばし、英児の枕の下から白いビニールにパックされている四角いものを取り出した。