ワイルドで行こう

 このイチゴ、食っちまいな。一口で食うなよ。もったいないから、じっくりゆっくり味わってから。おもいっきり……
 ヘビの悪魔的な囁きに、英児は従ってしまう。
 彼女のイチゴは、上から『よっつ』。ひとつ目は、いま堪能中の小さな唇。奥の奥まで味わって、存分に吸う。
 ふたつ目とみっつ目は、もう既に英児の手の中。ふんわり丸くて柔らかい頂に赤く実っている。それを指先でつまむと彼女が『あん』と声を震わせる。
 英児の唇は、琴子の白い首筋をゆっくり伝って、手の中にある、ふたつのイチゴを狙いに行く。
 こちらはひとつ目と違って、ちょっぴり硬くて噛み応えがある。でも意地悪なヘビがそこは噛むより舐めた方が甘いんだと言っている。英児の舌先はそこを優しく舐める。『そんな生易しいことすんな』。ヘビはそう言う。じゃあ……と、興奮を抑えていた熱い舌先にしっかり絡めて、深く長くしつこく、唇の奥へと吸い上げてしまう。『もう片方も、わすれるなよ』。そうだった――と、英児はもう片方の、硬く実っている赤い実を指先でつまんで、同じように頬張って濡らしてしまう。
 そして最後に、甘噛み……。
 『ああん』、彼女の濡れた吐息ととろける甘い声。
 彼女の肌がじんわりと熱くなって、少しばかり汗ばんできた気がする。赤い実の横に優しいキスを押すと、意地悪ばかりしたというのに、そのキス一つで許してくれたのか、英児の黒髪をぎゅっと握りしめ優しい胸元へと抱き寄せてくれる。だから、英児はもう一度同じ事をして彼女を試す。もう一度、意地悪をしてもお前はそうして俺を抱きしめてくれるのかと……。でも同じ、それどころか、強く愛撫すればするほど彼女の頬も赤くなって、さらに強く強く英児を抱きしめてくれる。
 最後、よっつ目のイチゴは、いちばん下。彼女のベビーピンクのショーツに隠されている。だから窓辺に立たせている琴子をそのままに、自分は白い皮膚を愛でながらおりていき、英児は床にひざまずく。
 見上げるそこに、隠されている最後のイチゴ。それを探すヘビが、彼女のピンクのショーツを引き下ろしてしまう。
 鉢植えなら緑の葉なのだろうが。彼女のイチゴは黒い茂みの中。そこがもう既に朝露のように小さな雫をまとっていた。その茂みをかき分け、英児はイチゴよりも先に、とろけて溢れているそこを指先で侵していく。
「あっ」
 小さく震える琴子。英児の指先が締め付けられるほど、感じてくれたようだ。
 英児の指が急激に燃えるようだった。それだけ、彼女の中で溢れている甘露が熱い。
「……なんか、琴子。感じやすくなっているな」
 恥じらったのか、琴子は見上げる英児の眼差しから、ふいっと顔を背けてしまった。

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