ワイルドで行こう

 でも、本当に英児はそう思っている。
 初めて抱いた夏、入り江の月夜。彼女は感じてくれたけれど、これほどではなかった。最後にはたくさん濡れてくれたけど、こんなに溢れてはいなかった。
 同居して二ヶ月あまり。英児はいつだって琴子の身体を肌を体温を追いかけていた。風呂上がりの彼女、寝起きの彼女、出勤前の綺麗に整った彼女、帰ってきたばかりの彼女、そしてキッチンで料理をする彼女。側にいるだけで、どうしようもなく抱きしめて、肌を撫でたくなる。吸いたくなる、キスをしたくなる。それどころか、彼女の身体を撫で回して、口先指先で愛撫して、理性を保とうと懸命な彼女を英児の欲求の渦に引き込んで、最後は彼女と自分の身体を繋げてしまう。そういう行為の繰り返しに、彼女が『もうだめ。ちゃんと寝る時間まで待ってよ』と何度も何度も抗議した。なのにやめないから最後は彼女も『もう、悪ガキ』と言いながらも英児を愛してくれていた。
 そのうちに、琴子が非常に感じやすくなっていることに英児は気がつく。少し前、キッチンで夕飯を作っている彼女に抱きついていたずらをして困らせ、またついついエスカレートしてしまい、彼女の可愛いお尻を触りながら奥に手を突っ込んでしまった時――。ほんのちょっと彼女を撫で回して、少し長いキスをしただけだったのに、もう下着までべったり濡らしていたことがある。
 たった、それだけで? なんだか、ちょっと前より感じやすくなってねえ? 密かに恥じている彼女の横顔がまた見物で、その時はそっと知らぬ振りをして抱きしめてあげた。
 それがもうずっと……。琴子は英児の誘いにすんなり騙されるかのようにして、すっかり女の性を開ききってくれている。
 今夜も……。夫になったから、余計に英児は遠慮なく指先で甘露を外にかきだす。茂みをじっとりと湿らしていく琴子を、英児はじっくり眺める。『う、う』と唇を噛みしめている女房が旦那の思うままに乱れていくのをずっと。
 最後のイチゴは、この甘露がないと美味しくない。だから英児はこれでもかというぐらいに、最後の可愛いイチゴに塗りたくる。
 最後のイチゴはそのままでも美味しいが、甘露を塗って頬張ると極上。丁寧に味わってやると、イチゴからさらに甘くなってくれる。ヘビの本能がそれを実行する。
 蜜で艶めく最後のイチゴを、もったいぶるように舌先で味見をするだけで、琴子がもう泣いているような声を漏らす。最後、薄皮を剥いて吸ってあげると、途端に彼女の身体が降参したように『あ……』と柔らかく崩れていくのを感じた。

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