ワイルドで行こう
別に狙っていたわけではないが、琴子はそういう体質だった。
「もう、やだ。パパ……わかっていてお酒のませたの……」
子供達が静かに寝ている場所を避け、ふたりはベッドの端に身を寄せ密かに触れあう。
触れあうならまだ優しいか。容赦ない男は既に、奥さんの着ているものを当たり前のように手早く脱がしにかかっていた。
彼女の熱くて柔らかい肌の上を滑っていく英児の手。なめらかな皮膚を辿れば辿るほど、彼女の匂いが濃くなっていく。
琴子はもう頬を真っ赤にしてぐったりしていた。先ほどのシャンパンを二杯。実は琴子、酒に弱い。よほど嬉しかったのか、いつもは一杯でとどめているところ『美味しいからもう一杯』と飲んだのだ。
それを俺のせいにしている時点で……。
「お前、酔ってるな。弱いのに二杯飲むから」
「うーん、ずるい。酔わせて脱がして遊んでやるって思ったんでしょ」
そんなこと言うなんて。やっぱお前酔ってるよ。
「パパって、いつもそうだもの」
「パパって言うな」
頭の上まで、着ていた夜のワンピースを脱がした。されるがまま、そのまま衣服を巻き付けられたまま両手をあげさせられている状態の琴子。まるで捕らえられ虐げられているような姿。それでも琴子は自らの力は少しもはいらないようで、そのまま。
そんな奥さんの首元に英児は唇を滑らせ、耳元にいつもの印のキスをする。黒髪の香り、彼女の耳裏の身体の匂いが混ざり、ますます英児の中の野生を揺さぶり興奮させる。
既にはあはあと息が上がっている妻にもう一度言う。
「パパじゃないだろ」
やっと琴子が呟く。
「え、えいじ……」
聞き届け、満足した英児はその微かに震えている唇をすぐさま塞いで、強く吸った。彼女の『ん……』と降参したようなうめき。