ワイルドで行こう
意外と律儀で礼儀正しくて真面目な人だな、と琴子は思わされた。
なぜなら、いま彼は、父の遺影がある仏壇に手を合わせているから。
「お邪魔致します。お父さん」
リビングのテーブルの支度を整えた母もやってきた。
「まあまあ、滝田さん。そこまで気遣って頂かなくてもよろしかったのに。でも……お父さんは喜んでくれているかも」
もう物言えない父ではなく、確実に母の方が嬉しそうな顔をしていた。だけれど、琴子もここまで気遣ってくれると嬉しい。
「とんでもないですよ。まだお会いして二度目の俺が家に上げてもらって。女性二人を置いて行かれたお父さんにしてみたら、心配で仕方がないでしょう。見知らぬ男が自分がいない家にあがるんですから。俺だったら、絶対に嫌です」
『まあ』と、母も絶句。でもやっぱりそれが嬉しくて仕方がないようだった。だけれど、お兄さんはちょっと厳しい顔を母に見せていた。
「お母さん。この際ですから言わせて頂きますが。やっぱり見知らぬ男を、どんなに世話になったからって気安く家に呼んだりあげたりしたら駄目ですよ」
「勿論、お世話になっても『滝田さんじゃない男性』はお断りですよ」
けろっと言い返され、『注意喚起』をしていた彼が面食らう。
「だから、お母さん。もし俺が、『女二人、警戒心薄いし、家に上げてもらえた。死んだ主が残していった財産でも乗っ取れそうだ』とか思っていたらどうするんですか」
懸命に母に説教する彼。だがそこで、母も琴子も顔を見合わせ笑ってしまう。
「やだ、滝田さんったら。ねえ、お母さん」
「本当よ。財産を狙っているなら『狙っている』て言っちゃ駄目じゃない」
「だから。俺はそのつもりはないけど、そういう男がいるかもしれないから……」
また母が大笑い。琴子もちょっと彼に気遣って口元を押さえたが、やっぱり可笑しい。だって、本当に彼がムキになって母を説教しているから……。
なぜなら、いま彼は、父の遺影がある仏壇に手を合わせているから。
「お邪魔致します。お父さん」
リビングのテーブルの支度を整えた母もやってきた。
「まあまあ、滝田さん。そこまで気遣って頂かなくてもよろしかったのに。でも……お父さんは喜んでくれているかも」
もう物言えない父ではなく、確実に母の方が嬉しそうな顔をしていた。だけれど、琴子もここまで気遣ってくれると嬉しい。
「とんでもないですよ。まだお会いして二度目の俺が家に上げてもらって。女性二人を置いて行かれたお父さんにしてみたら、心配で仕方がないでしょう。見知らぬ男が自分がいない家にあがるんですから。俺だったら、絶対に嫌です」
『まあ』と、母も絶句。でもやっぱりそれが嬉しくて仕方がないようだった。だけれど、お兄さんはちょっと厳しい顔を母に見せていた。
「お母さん。この際ですから言わせて頂きますが。やっぱり見知らぬ男を、どんなに世話になったからって気安く家に呼んだりあげたりしたら駄目ですよ」
「勿論、お世話になっても『滝田さんじゃない男性』はお断りですよ」
けろっと言い返され、『注意喚起』をしていた彼が面食らう。
「だから、お母さん。もし俺が、『女二人、警戒心薄いし、家に上げてもらえた。死んだ主が残していった財産でも乗っ取れそうだ』とか思っていたらどうするんですか」
懸命に母に説教する彼。だがそこで、母も琴子も顔を見合わせ笑ってしまう。
「やだ、滝田さんったら。ねえ、お母さん」
「本当よ。財産を狙っているなら『狙っている』て言っちゃ駄目じゃない」
「だから。俺はそのつもりはないけど、そういう男がいるかもしれないから……」
また母が大笑い。琴子もちょっと彼に気遣って口元を押さえたが、やっぱり可笑しい。だって、本当に彼がムキになって母を説教しているから……。