ワイルドで行こう

「いや、その。違った」
「ならいいんだけどよお」
 矢野じいも、小鳥の活発さは目に焼き付けているのでそれはそれは心配のよう。
「琴子、大丈夫か。なんかあったら、俺にも言ってくれよな」
 そんな矢野じいに、琴子も申し訳なくなったのか。
「ご心配おかけてすみません。あの、そうじゃなくて……実は、できちゃって」
 と告白。
「は、できちゃって? って、できちゃったのか」
 もう矢野じいもびっくりの顔。
「え、それ。本当!?」
 矢野じいのそばに隠れていたのか、武智まで顔を出してきた。
 琴子がこっくり頷くと、もう矢野じいと武智がまたわあっと大騒ぎ。
「なんだよ、なんだよ! 結婚して暫くは出来ねえ出来ねえって言っていたくせに」
「ほんと、ほんと。あっという間に三人目じゃん!」
 こんな時、琴子は祝ってもらえるが、英児には。
「英児に似ないことを祈る」
 きっぱり矢野じいが言い切る。
「だね。男の子でも琴子さんに似て欲しいな。はらはらするもんな」
 はっきりは言わないが、遠回しに『小鳥』のことを言っているのがわかる。以上に、それが『英児、タキ兄に似たせいだ』という暗黙の――。
「うっせいな。琴子が育てるから大丈夫なんだよっ。小鳥だってちゃんと可愛い人形で遊んだりしているからな」
「車も好きだよな。あれ、年頃になったらかっ飛ばすぞ。お前みたいに」
「俺もそう思う」
「なるもんか。ちゃんとそのころには琴子みたいになっているんだ!」
 ムキになる夫、そして夫をからかう龍星轟の男達を見て琴子が笑っているのもいつものこと。
 だが小鳥は本当にそうなのだ。人形で遊ぶし、車も好きで。矢野じいも『あれ、お前に似たぞ。気をつけておけよ』と、ため息をつくことがある。
 聖児はどうだろうか。まだ小さくて分からないが、お姉ちゃんの真似っこザルみたいで、まさかまさかと思うことも。
 上手く二歳置きに出来たようだが、三人目は果たして――?
 ロケット乗員、五人で出発です。

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