ワイルドで行こう


『たぶん。琴子さんが帰ってくるまで居座ると思うから。もう帰ってもいい――とか、そういうこと言うと、また訳もなく怒り出すから気をつけてねー』
 義姉はそれで既に失敗したと、怒りんぼの義父の荒っぽい機嫌の上下に辟易している様子。
「うん、わかった。ありがとな、義姉ちゃん」
『じゃあ、よろしくね』
 頷いて、英児は電話を切る。
 なんだよ。俺を心配してきてくれたのかよ。俺だってもう三児の父だよ。小鳥も聖児もおんなじように面倒を見てきたよ。琴子同様に、三人目になったら、けっこう慣れているよ。
 でも、そう言えば義姉が喰らったような訳の分からない雷がぶっとんでくるんだなと、英児も思う。
 小鳥と聖児の相手をしている父が急に言う。
「英児。なにか用事があるなら、買い物とか行ってもいいぞ。ちょっとの間ならワシが小鳥と聖児なら面倒見ているから」
 だがそこで、英児はまた義姉の言葉を思い出す。『任せてといわれても、気をつけてね。なんだかんだ言っても、もう足腰弱っているお祖父ちゃんなんだから。子供達と祖父ちゃんだけにするとか気をつけてよ』と。
 だけれどそこで『親父と子供だけだと危ないから』とか言えるはずもない。要は『俺はまだまだ現役、判断もしっかり出来るし、まだまだ動ける』と思っているのだ。
 だけれど、そこは英児も『義姉ちゃんからの教え』に従う。
「あのさ。どちらにせよ、元気有り余っている子供達を雨でもドライブに連れて行こうと思っていたんだよ。それならさ、一緒に行って、俺が買い物をしている間に、親父が小鳥と聖児の面倒を一緒に見てくれよ」
「わかった。それじゃあなあ、いまから出かけて、外で昼飯食べないか。祖父ちゃんのご馳走だ」
 すると子供達がキラッと目を輝かせすぐさま反応した。
「じいちゃん、レストランつれていってくれるの!」
「そうや、小鳥。一緒にいくぞ」
「やったーやったー」
 聖児も万歳をして大喜び。
 ああもう、こうなったら仕方がないなあ……と、英児も苦笑い。
 すぐに皆で出かける支度をして、小雨の龍星轟を白いランドクルーザーで飛び出した。じいちゃんの軽トラックはガレージでお留守番。

 

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