ワイルドで行こう
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まだやまぬ雨の中、子供達と年老いた父親を乗せて走る。
ひとまず、レストランで食事をしてドラッグストアで買い物をして……。英児が玲児をだっこバンドでおぶっていろいろと選んでいるその間、落ち着きない小鳥と聖児は父親が面倒を見てくれている。
「助かるよ。親父」
それは本心。もう、とにかく小鳥がすばしっこいったら。目を離したら、迷子になったりすることもたまに。
「よーし。最後はじいちゃんが、なにか買ってあげるぞ」
いつになく気前が良いのは気のせい? 祖父さんだからとて、英児の偏屈な父親は孫に底なしに甘いわけでもない。もしかして……やっぱり『役に立つ』ってもんが嬉しいのかとか思ってしまう息子。
「悪いな。親父」
「いいんだ、いいんだ。ほらバイパスにでっかいおもちゃ屋があっただろ」
張り切りついでに、そこまで行こうと言いだした。あんまりにも機嫌が良いので、逆にちょっと触れば爆発する予感。英児もそのまま従ってしまう。
雨が小降りになった午後。すこしだけ雲間から青空。それだけで小鳥が上機嫌に歌いだす。それをまた祖父ちゃんも楽しそうに相手したりして。
聖児と玲児は眠ってしまった。小鳥が歌っていても、三人のうち二人が眠っていると静かに感じた。娘の歌を聴きながら運転する英児は……。
夏の星空。轍(わだち)がある古い畦道。でこぼこで、青草が茂っていて、蛙の声。干上がった水溜まり跡のへこみ。
『とうちゃん、もっともっと』
『うっせいな。静かにしとけや。英児、荷台からおちるんじゃねーぞ』
急激に蘇った思い出に、英児ははっとする。
「そういえばよう。俺って、親父の軽トラに良く乗せてもらっていたよな」
「ああ。お前、はしかい悪ガキじゃけんど、軽トラの荷台に乗せて走ると嬉しそうに大人しくなるけえ、よく乗せて走ったわな」
荷台に寝転がって青空を見たり、運転席と背中合わせに座って、バックで走っているような感覚で荷台から過ぎ去る畑を眺めたりするのが好きだったような。