ワイルドで行こう
「げ、マジ」
「え、ウソっ」
全力投球、思い切り感情をぶつけあっていた小鳥と茶髪の彼は、その時ばかりは怒りを解除した顔を見合わせる。
『きゃー』
校舎の下、外、そこでも『かしゃーん』と遠くガラスの割れる音。そして女の子達の悲鳴。
彼と一緒に三階の窓に身を乗り出す。
「やべえ!」
直ぐ真下に女の子が二人。彼女たちの足下に割れたガラス。そして手を押さえてうずくまっている子――。
「こ、小鳥ちゃん……」
友達の花梨ちゃんは顔を真っ青にして立ちつくしている。
彼女のために起きた喧嘩、怯えている友達、そして困惑している喧嘩相手の同級生。
だけど、小鳥は迷わず駆けだしていた。
「おい、待てよ」
彼が追いかけてくる。でもその時はもう、小鳥は階段を下りて途中から飛び降りていた。
一階の外に出ると、既に人だかり。
『三年の廊下から落ちてきたって』
『え、喧嘩? やだ。この学校でそんな乱暴なこと』
男子も女子もうずくまる女の子を遠巻きに眺めたり、小鳥が割った窓を見上げたりを繰り返している。
「ごめん、大丈夫!?」
その中を小鳥は躊躇せずに割り込んで、一直線に女の子へと向かう。
その時。誰もが小鳥を見て、息を止めた雰囲気、空気を感じ取る。だけれど小鳥はなんとも思わない。なんでって『いつものこと』だから。
そしてそれは驚いた彼等彼女等も同様に――。
――また、滝田さんだ。
そんな囁きを小耳に挟みつつも、小鳥はうずくまっている制服の女の子へと跪いた。
その子の顔を覗き込む。
「ごめんね。大丈夫? けが……」
怪我、していた。彼女の手の甲から血。
流石の小鳥も血の気が引く。
「いこ。保健室、すぐ!」
なに遠巻きに見てるだけなのよ! そう吠えたい気持ちを抑え込み、小鳥は自分より小柄なその子をざっと両手に抱き上げていた。