ワイルドで行こう
そのくせ、チャラチャラ、他の女の子に声をかけられて調子に乗ったり、花梨ちゃんに冷たくしたり。
あげくに、花梨ちゃんが作ってきたお弁当を『ウザいんだよっ』と払いのけて床にたたき落とした。
そこで頭に血が上った小鳥と、どうなったかは、ガラス窓が割れる経緯へと繋がっていく。つまりそういう喧嘩だった。
「ついカッとなるところが私の悪いところです、か」
反省文の冒頭に書いたところ、ちゃっかり読んだ彼に呟かれ、小鳥はむくれた。
「人の読んだんだから、アンタのも読ませなよ!」
しかし彼はこんな時は落ち着いた顔で、小鳥のように返せとムキにはならない。
するっと取れてしまった原稿用紙を眺めてみる。
豪快な男っぽい字。そして……小鳥は目を見開く。
「これ、竜太が書いたの? なにこれっ、新聞の記事みたいっ」
書き出しからすごく大人っぽい文体、そして男性らしい理論を組み立て……。だが小鳥はハッとする。
「ちょっと、これどこにも反省が書かれていないじゃない」
「そっか? ここに『男は時には素直になれない生き物である』とあるだろ」
バカ、先生が書いてほしい反省文はこういうのじゃないでしょうに――と言おうと思ったが。
「なーんだ。みんなの前でお弁当を渡されて、ちょっと恥ずかしかったんだー、竜太」
素直じゃなかった彼の心情を見透かし、ニンマリと勝ち誇って笑ってみせる。だが、そこは彼がぷいっとそっぽを向いてしまった。
「そうだよね……。それじゃあ先生が読む原稿に『彼女に素直になれなかった』と書くことは出来ないから、『男は素直になれない生き物』か。上手いね!」
なんて。敵を褒めてみたら、茶髪のふわふわパーマのチャラ男が、妙に恨めしそうに小鳥を睨んでいたのでドッキリとした。今度は……なにやら、本気の、眼?
「素直になれねえのはな、自分の女に、じゃなくてよ……」
なに? 真顔で聞こうとしたが、竜太は黙り込んでしまう。