ワイルドで行こう

 .リトルバード・アクセス《1b》




 暫くして。やっとこの部屋から二人揃って出してもらう。

 その時、職員室には二人の母親が。竜太も自分の母親と目が合うと、申し訳なさそうに視線を背けているのを、小鳥は見てしまう。

 教頭先生に連れられて、職員室の片隅。応接テーブルとソファーがあるところに、小鳥と琴子母、そして竜太と竜太母が並べられ、『ちょっと今回は……』と教頭先生から注意をされる。

 だけど。なんていうか。

「本当に申し訳ありませんでした。お怪我をさせてしまったお嬢様のご家庭には、こちらからもお詫びに伺います」
「本当に申し訳ありませんでした。私どもも、滝田さんと共にお詫びに行きたいと思っております」

 こういう『問題児の母』というか。琴子母は、いつもきちんとした格好を崩さず、楚々として、動じず。きちっと頭を下げてくれる。

 ――悪いことなんてしていない。

 小鳥はそう思う。けれど、怪我をさせてしまったのは、どうにも言い訳が出来ない事実。

 たいした怪我ではなかったけれど、落ちてきたガラスが偶然手の甲にかすってしまい出血した。縫うほどでもなかったが、その子は包帯を巻かれた。
 しかも『ピアノ』を習っているという。大事な手。
 彼女は大事をとって早退したらしく、学校側から母親にも連絡をしたとのこと。そのお母さんがちょっと激怒したらしく……。

 それで加害者側の小鳥と竜太の親が呼ばれる経緯に至ったらしい。
 母親が呼ばれるほど、あちらのお母さんが怒りがおさまらないのか……。そんな不安が渦巻いた。





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