ワイルドで行こう
小鳥は徐々に心が痛くなって、脱力する。
なんでこんなことになっちゃうんだろう。いつも。
落ち着きなくて、後先考えないで。周りの状況を判断しないで。感情のままに、突っ走ってしまう。
その性格で、同級生の男の子とやり合って起きたことに『私は悪くはない』など、小鳥は言いたくない。
それに。幼い頃から、どうも、こういうことを招きやすい性質のようで。
その度に、楚々とした奥様であるはずの琴子母が、毎度毎度黙って頭を下げて、方々に謝罪にいってくれていた。
小鳥も成長するにつれ、『申し訳ない』と感じるようになった。
だから高校に入学してから、すぐに怒っても立ち止まるように心がけた。
今度は失敗しないよう良く状況判断をして――。
そのおかげか。多少騒がしいことになっても、自分たちで対処できるようになる年頃ということもあって、子供同士で決着をつけられるようになる。だから、母親がこうして呼ばれることはなかった。
今年一年、何事もなければ。三年間無事に、ママに迷惑かけずにやり過ごせそうだったのに。悔しい。
小鳥は先生の親への話を聞き流しながら、ぐっと唇を噛んでいた。
私だってお騒がせの小鳥ちゃんではなくて、大人になったね――て言ってもらえそうだったのに。こんなの、幼い時から変わっていないことになってしまう。
ママから『思慮深い女の子になってね』と、いつも言われてきたのに。
小鳥もその通りになりたいと思っているのに……。
こんな小鳥のことを大人達は『元ヤンの英児に似た』という。
自分でも思う。ほんっとあの元ヤン親父とそっくりだなあ……と。
でも小鳥は『きちんとしている可愛いママに似たね』と言われたい。
あんな適当で車バカの元ヤン親父より、きちんと真面目に堅実に生きているママに褒めてもらえる方がずっと嬉しい。
琴子母は、小鳥の目標でもあるのに……。
こんな迷惑、来年は大学生になるというのに、また……かけちゃった。
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