ワイルドで行こう

 .リトルバード・アクセス《2a》




 授業が終わるまで、気が気じゃなかった。

 やっと終わって急いで教室を出ようとしたら、先生から『一緒に行くか』と声をかけてくれる。

「なんで、おまえ達までついてくるんだよ」

 小鳥と先生の後ろを、数名のクラスメイトがなんだかおもしろがってついてくる。その中には花梨ちゃんと、隣を一緒に歩く竜太も。

「先生も龍星轟は知っているけど、店長の車ってやっぱり格別だな。男心になんかこうくるわ」

 父親よりもうすこし若い世代の日本史先生も、親父さん仕様の新GT-Rを見てなにか感じてくれたようで、小鳥もそれは嬉しい。

「滝田はどんな車に乗りたいんだ」

 先生に聞かれ、小鳥は迷わず答える。

「父が愛蔵しているトヨタのレビン、AE86を譲ってもらうのが夢です」
「80年式のハチロクも持ってるのか、親父さん!」
「しかも、赤なんです」
「赤かー! レビンってかんじだなあ」

 父親世代の男性は車の話が好きな人が多い。車に夢があったんだろうなと小鳥は思う。

 だが和気藹々と和んだのはここまで。

「さて。親父さんはなんで来たのかなー」

 先生もちょっと億劫そう……。小鳥も苦笑い。
 たぶん、先生達も『元ヤン親父』と知っているだろうから、きちんとしている琴子母が抑えられなかった突撃がどのようなものになるのか。そう考えるだけで心穏やかではなくなることだろう。

 娘の小鳥がこれほど構えているのだから、他人様だったら余程のことだ――と思ったりする。





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