ワイルドで行こう
「お前達。こんなところで固まっていないで、教室に戻れよ」
先生がひとまず、ついてきたクラスメイトを追い払うが、彼等もそれなりにしか散らない。
「小鳥ちゃんー。お父さんに怒られたら私も呼んでね」
元々は花梨ちゃんの気持ちに感情移入したことから始まったこと。
花梨ちゃんは龍星轟にもよく遊びに来ているので、父の英児もよく知ってくれている。
逆に花梨ちゃんも『元ヤン親父』の気性を肌で感じているので、『怒ったら怖い人』と分かったうえで、こうしてついてきてくれたのだろう。
「滝田、俺も。俺が感情的になったから」
喧嘩相手の竜太も申し訳なさそうだった。
だが小鳥は真顔で返す。
「うちの親父さんを知らないんだったら、会わない方がいいよ」
『元ヤン親父』だからね。
平気な振りで笑って見せたが、小鳥の心臓は徐々にばくばく脈を打ち始めていた。
先生ががらっと職員室の戸を開けた時、すぐに『父、英児』の姿が見えてしまった。
先生達の机が並ぶ向こう、窓際の明るいところにある応接ソファー。そこにグレーのスーツを着込んだ父が大股開きでどっかり座っていて、でも膝に両手をついてぐったり項垂れている。
正面には既に教頭先生が向き合ってくれていて、でもそんな父の様子はまるで『先生、申し訳ありませんでした』と頭を下げたきりあげようとしない姿にも見えた。
それは本当なのか。項垂れている父と向き合っている教頭先生が困り果てた顔をしている。
「あ、勝浦くん。小鳥さんを連れてきてくれたんだね」
日本史の先生と一緒にいる小鳥を見て、何故か教頭先生がほっとした顔に。
だが父はまだ項垂れたまま。
「小鳥さんもこちらに来てくれるかな」
教頭先生に手招きをされ、小鳥も『はい』と返事をして窓際のソファーへ向かう。