ワイルドで行こう
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職員室を出ると、そこにはクラスメイト……だけじゃない、なんだか来た時より多い人だかりが出来ていてびっくり。
その一番前にもう涙で濡れている花梨ちゃんが立っていた。
「あの、お父さん。小鳥ちゃんがガラスを割ることになったのは、言いたいことが言えなかった私のせいなんです」
だけど、スーツ姿の父は、顔なじみの花梨ちゃんにはいつもの白い歯を見せる笑顔を見せた。
「花梨ちゃん。もし花梨ちゃんがキッカケでもよ、その後のこいつの行動の取り方がいけねえ。花梨ちゃんのことと、小鳥がやっちまったことは別問題な」
「でも。聞こえました。小鳥ちゃん、お誕生日を迎えたら免許を取りに行くことすっごくすごくずっと前から楽しみにしていたんですよ。お願いです。それだけは許してあげてください」
花梨ちゃんが深々と頭を下げても、彼女には気の良い親父さんだが首を振った。
「悪いな、花梨ちゃん。だけどケジメはつけさせたいんだわ。これはおっちゃんと小鳥の問題で、小鳥も納得したしよ」
父が意志を確かめるように見下ろしてきたので、小鳥もきっぱりとした顔で花梨ちゃんに頷いた。
「いいよ。花梨ちゃん。私もそうしないと、すっきりしなくなったから。私がそう決めたと言えば、花梨ちゃんならわかってくれるよね」
「小鳥ちゃん……」
親友の彼女だから、花梨ちゃんもそこで黙ってしまう。
「お父さん。小鳥さんは悪くないんです。俺が、女子の彼女にムキになって。彼女の手を弾いたせいで割れただけなんです」
竜太も前に出て英児父に訴えてくれる。でも親父さんの返答は一緒。しかし、小鳥と共犯である男子には、あの元ヤン親父の目つきをみせた。
「男も女も関係あるか。喧嘩するなら場所選べ。ガキ臭い喧嘩すんな」
あの竜太が親父さんに睨まれただけで、ビクッと固まったのもわかった。
「でも。車屋の娘だから、彼女は、だから、免許……」
それでも竜太は、元ヤン親父の威勢に恐れながらも進言してくれる。
「うちの娘のことよりもよ、まずは母ちゃんだろ。母ちゃんを心配させんなや」
その一言を言っただけで、竜太が項垂れた。