ワイルドで行こう
.リトルバード・アクセス《3a》
『そういうことは、家庭内で子供に言えばいいことでしょ。それをわざわざ学校にまで出向いて、先生達の前でやるだなんて』
『だってよ。空港から帰ってきた途端、矢野じいからいちばんに聞かされて。相手のお嬢さんが怪我したって聞いてさ、あちらのお母さんがめちゃくちゃ怒ったから琴子が呼び出されたとかさ、お前が学校に行って先生に頭下げて、あちらの奥さんにも頭下げてって聞いてよー。なんで俺が留守の間に……』
『そうじゃないでしょ。小鳥ちゃんだって女の子で、ああ見えても繊細なんだから。みんなの目の前で“こんなに自分は悪かったんだ”て、お父さんから晒してどうするのよ!』
龍星轟、三姉弟。両親が寝室に籠もってどうしているのかちょっと気になる。
盗み聞きがばれたら、琴子母にも英児父にも『行儀悪い』と叱られるから、ちょっと距離を取って――。
でも小鳥の部屋辺りから、そんな声が聞こえてきた。
『悪かったよ。マジで。自分でも後になって“まずい。俺も娘と一緒じゃねーか”って、先生達の前で家の中で済むこと派手にやってしまったと落ち込んだよ』
『そうでしょう、もう。ほんとに、もう』
娘と一緒――、カッとなったら後先見えない。父娘、そっくり。
そこで小鳥の隣にいる、聖児が『ぷ』と笑ったので『笑うな』と茶髪頭を軽く叩いた。
『なあ。そんな怒るなよ。もう二度と突然、学校に押しかけるとかしねえから。行く時はお前に連絡するし、お前といくよ』
小鳥の頭の中。父がああいう声の時はどうなるか、その様子が『ぽん』と浮かんでしまう。
ママに抱きついて、ごめんごめんとほっぺたにキスをしようとする姿が。
これって我が家では日常茶飯事。小さな頃から父は母にはべったり……というか。見慣れた光景なので、とっても自然でなんの違和感もない姿。