ワイルドで行こう



「お母さん。本当にごめん」
「言ったでしょう。小鳥ちゃんは気にしない。自分で自分のことをちゃんと考えて、自分で決めて、動いたでしょう。もう終わり」
「でも。お父さんと、お母さん……」

 そう言った時だった。シャツとデニムパンツに着替えた父がリビングに現れる。こちらもすっごい不機嫌な顔――。

「走ってくるわ。メシ、いらねえ」
「はい、どうぞ」

 引き止めてもくれない母の即答に、強面で不機嫌な父の眉間にさらなるシワが寄ったのを小鳥は見てしまう。

「とうちゃ……ん」

 小鳥が呼び止めようとした時には、もう英児父は玄関へと消えてしまう。

 二階から龍星轟ガレージへと見下ろすと、この日の親父さんは、長年の愛車である黒いスカイラインGTRで出て行った。

 この夜、父は遅くまで帰ってこなかった。そして、母は一階にいる鈴子祖母の部屋で一晩を過ごしたようだった。
 

 まさか。自分が起こした問題のせいで、あの仲が良い両親が不仲になるってことないよね?

 これが毎晩とか続かないよね?




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